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NEWS お知らせ

2019/11/21 パワハラに「該当しない」とは?

 厚生労働省からパワハラについて「該当しない」例が初めて指針案として公表された、との記事がありました。

 

パワハラ「該当しない例」も 厚労省が初の指針案

https://mainichi.jp/articles/20191120/k00/00m/010/198000c

 

 一読して妥当な内容だと感じました。

 労働各法においては、使用者(経営側)と労働者では使用者が力の強い側だという前提があり、力関係の均衡を図り労働者を保護する観点から、長時間労働の抑制や最低賃金の設定、雇用機会の平等や必要な休暇を取る権利、そして不当なハラスメント防止などを定めています。一方で、これらを盾に「違法だ!」と騒いで使用者側を委縮させる労働者が存在する可能性は否めません。

 例えば、遅刻や無断欠勤を繰り返す社員を叱責したところ「恫喝はパワハラだ!」と言われたり、少し難しい仕事をさせたところ「無理だとわかってやらせてる、パワハラだ!」と言われたりしたら、やりにくくて仕方ないですよね。労働者側が使用者よりも強い立場にあるのであれば、それはそれで力関係の均衡を図る必要があるわけです。使用者と労働者は対等関係に置かれることが理想なのです。

 ただし、この「力関係の均衡を図る」というのはたやすいことではありません。遅刻を繰り返す部下を殴ったり、長時間立たせて大声で説教するなどすれば、それはやっぱりパワハラになりますよね。会社のボールペンを勝手に持ち帰った労働者に対し、以後一切の書類作成の業務をさせないようにするのもパワハラにあたると思います。では、労働者が暴力を奮ったことに激昂し、事務所から追い出した場合はどうなりますか? 会社の規則で「違反」とされた服装で意図的に出勤した社員を出勤扱いにせず帰らせるのは? 実際「均衡を図る」というのは、そこらへんに落ちている石を集めてきて、天秤の左右に乗せてぴったり釣り合いを取るくらい難しいのだと思います。

 ただ、法律というのは原則的に無茶を要求しません。「社会通念上相当と認められる場合」などという言い方をしますが、広く一般的な感覚をもって問題がないと思えるものは、本来違法にはならないのです。使用者が労働者の立場を尊重し、また労働者が使用者の立場を尊重し、相手側の視点に立って物事を言い合うことができれば、問題が起こることなどほとんどありません。

 人間関係にトラブルはつきものですが、自分の利益や都合ばかり優先させていないか、当事者同士が立ち止まって考え、会社としてどうすることが好ましいのかを第三者的に考える必要があります。使用者、労働者の両者ともに納得感のある選択肢を探ることが大事なのではないかと思います。

 

【執筆】人事担当